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  • 2013.10.17 Thursday
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夜は短し歩けよ乙女

評価:
森見 登美彦
角川書店
¥ 1,575
(2006-11-29)
言わずと知れた名著。
これぞまさしく僕の好みでありツボである。
今更語るは野暮かもしれんが、読書記録の意味も込めて。
人はどんな基準で本を手に取るだろうか。
作者名、知人の薦め、あるいは雑誌の紹介、本屋の平積み、アマゾンの告知、いろいろとあるかと思う。
僕がこの本を手にとったのは、何のことはない、表紙絵が好みだったからだ。
いわゆる“ジャケ買い”である。
しかも古書店でだ。

「ASIAN KUNG-FU GENERATIONのジャケに似てるな」
というのが真っ先に浮かんだところだが、まさしく中村佑介氏は、ASIAN KUNG-FU GENERATIONのジャケットデザイナーその人だった。
しかも同い年らしい。
彼のどこか大正浪漫然とした絵は好きだ。

閑話休題。
当然内容について語らなくてはならない。
これは、とある古風な大学生が、とある天然の後輩に恋をし、素敵なご都合主義で大団円を迎える話だ。
きくち正太の漫画と、映画の「アメリ」と、武者小路実篤あたりをうまくミックスした感じ、といってどこまで伝わるだろうか。
いずれかの作品、あるいは全部が好きな僕のような輩は今すぐ注文することをお勧めする。

文章はたまに難しい言葉が使われるが読み進めるのにストレスにはならない程度。
ひじょうに読みやすい。

表現はオノマトペ(擬音・擬態語)をひらがなで用い、また「二足歩行ロボットのステップ」などの言い回しで、軽妙洒脱であるばかりでなく、かわいらしい表現が使われている。

そして、二人による一人称小説であるというのも特筆すべきポイント。
片方で不思議な現象に直面すると、もう片方でそれが何故起こったのかということがわかる。この構成は、サウンドノベルやアドベンチャーゲームと呼ばれるものではよく見かけるが、書籍ではあまりないのではないだろうか。

また、この主人公二人は最後まで名前が与えられない。『先輩』『彼女』などの代名詞で呼ばれ続ける。
これには、読み手が感情移入しやすくなるという効果があるわけだが、同時にきちんとした記号が与えられないので、記憶に残しにくいという諸刃の剣だ。
ライトノベルのようなキャラクター小説では禁じ手である。
それでも主人公二人には一人称の個性がはっきりと出ており読んでいて楽しい。

残念なことに僕は京都の街に4度も行ったにも関わらず、寺めぐり程度しかしていないばかりか、その記憶すらあやふやである。
だから、ここで語られている街の「顔」が、実際どうなのかを思い起こすことはできないが、その字面から想像するだけでも楽しい。
次に京都に行くときは、この本に書かれた先斗町にも足を運ぶことになるだろう。

4部構成になっているが、やはり最初の「夜は短し歩けよ乙女」がスバラシイ。
普通、巧妙に張られた伏線の中にはミスリードもあり、敢えて回収しないものもある。
さらには、この本では二人の一人称の物語が、あざなえる縄の如く、交互に補完しあって、二つの物語でありながら一つの物語を作っていく。
そのなかで、登場人物全てがつながるなどということを、無理なく理由付けしてみせる。
話の面白さもあって、まさに喝采を送りたい気持ちになった。
登場させる小道具もまたいい。
赤玉ポートワイン、達磨、ニセ電気ブラン、錦鯉、弁論、閨房。
“らしい”もので埋め尽くされる舞台というものは壮観だ。

2部の古本市の話では、著者の本への愛情が見てとれて良い。
3部の学園祭の話は、まこと学園祭はかくあるべしという風情で、ノスタルジーや憧れを感じる。
小説の中に分割した劇を挿入させるなど、すばらしいアイディアだと思う。
このパートに限らず、この本の中では惜しげもなく面白い試みを随所で実行している。

そして最後の大団円に向かうわけだが、ここに来てファンタジックな要素が増す。
それは単に、主人公たちがあまり出歩かないために、ウェイトが幻想寄りになってしまうということなのだが、これを主人公が熱にうかされていたというところにくっつけて、幻想をできるだけ無理なく飛躍させるところがすばらしい。

個人的なことを言うと、『先輩』の思考はかなり僕の大学の頃と似ていて、おおいに感情移入ができた。
とにもかくにも、これでやっと「好きな本は何ですか?」と訊かれた際に、胸を張って答えられるタイトルが見つかった。
既に「好きな本」があるという方も、これを読んで答えが挿げ変わるかもしれない。
そんなオモチロイ本なのだ。



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  • 2013.10.17 Thursday
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